top of page

La Strega 〜「パンが脱走した日」の夜〜レタスがあなたを包みます・・・

x Happy
8月2日
読了時間: 3分

更新日:8月9日



ローマの三つ星レストラン La Strega。


その夜、見習いのアンが期間限定メニューとして考えたのは、


少し変わった一皿だった。

パン 脱走中
パン 脱走中




「パンが脱走したレタスバーガー」。



ちょっと疲れたので、

休暇をいただきます。


置手紙をして、パンは脱走。。( ̄∇ ̄;)ハッハッハ



香ばしく揚げたフィッシュフライと大きな海老、


イタリア産チーズを、シャキシャキのレタスで包んだヘルシーな一品。


オプションでその隣には、小さなマルゲリータピザが添えられている。





テーブルについたのは、いつもの三人。


♬金髪のファッションデザイナー ステラ、


♬ジュエリーショップで働く栗色の髪の キャサリン、


♬旅行雑誌の編集者 フェリーチェだった。




ステラがレタスバーガーを持ち上げて笑った。



「ねえ見て。今日はパンが家出したんだって。」



キャサリンも吹き出した。



「アンらしい発想ね。『パンも休暇中です』ってメニューに書いてあったわ。」



フェリーチェは微笑みながら言う。



「でも、それって案外深い話よね。」





サクッと揚がったフィッシュフライ。



ぷりぷりの海老。



レモンの香りがほんのり効いたタルタルソース。




パンがなくても、十分に満足できる味だった。



ステラが窓の外を見ながら静かに話し始めた。



「ファッションの世界って、締め切りが続くでしょう?


休むのが怖くなるの。


でも最近気づいたの。


休まないと、新しいデザインって浮かばないのよ。」


キャサリンもうなずく。



「ジュエリーも同じ。


細かい仕事だから、疲れたまま作ると輝きまで曇って見えるの。


だから私は、休暇も仕事の一部だと思うようになった。」



フェリーチェは旅行雑誌を作る立場らしく、少し遠くを見るような目をした。


「旅の記事を書いていて思うの。


景色が人を癒やすんじゃなくて、立ち止まる時間が人を癒やしているんだって。」



三人はしばらく黙って、


小さなピザをゆっくり味わった。



焼きたてのマルゲリータから、モッツァレラチーズが糸を引く。


「ねえ。」


ステラが言った。


「今度、本当に休暇を取らない?」


「賛成!」


二人の声が重なる。


キャサリンが地図を広げた。


「北イタリアなら、コモ湖でのんびりしたい。


湖を見ながらエスプレッソを飲んで、本を読むだけでも幸せ。」





フェリーチェは目を輝かせる。


「私はドロミテ。


朝の澄んだ空気の中を歩いて、山小屋で温かい料理を食べたいな。」










ステラは少し考えてから笑った。


「私は南かな。


シチリアの青い海を見て、レモン畑を歩いて、夕方は白ワインを飲みたい。」



ステラの想像、フェリーチェはカメラ撮影担当。
ステラの想像、フェリーチェはカメラ撮影担当。

キャサリンが続ける。


「それならプーリア州のアルベロベッロもいいわ。


白いトゥルッリの町を歩いて、オリーブ畑を眺めたい。」




スイーツがでてきそう
スイーツがでてきそう









フェリーチェは笑顔で言った。


「北も南も、競争する場所じゃないね。


その時の心が求める場所へ行けばいい。」




そのとき、支配人が三人のテーブルへやって来た。



「皆さん、パンが戻ってきたそうですよ。」



三人は顔を見合わせ、大笑いした。



「よかった!」



「でも今日は、レタスバーガーの日でいいね。」



「パンにも休暇が必要だったんだもの。」



店内には優しい笑い声が広がり、アンも厨房でほっと胸をなで下ろした。



La Stregaでは、その日から期間限定メニューにこんな一文が添えられるようになった。




「パンが休暇を取った日は、レタスがあなたを優しく包みます。



人もパンも、ときには休むからこそ、また誰かを笑顔にできるのです。」 












つづく


bottom of page