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La Strega ― One Health 第二話・山の一杯の水が教えてくれたこと

x Happy
7月19日
読了時間: 4分


第1話のつづき、


翌翌週の夕暮れ。



ローマは昼間の暑さが少し和らぎ、


La Stregaの窓からは夕焼けに染まる街並みが見えていた。


薪窯の前では料理長ヴィオラが焼き加減を確かめ、


シェフ見習いのアンは厨房で前菜やデザートの仕上げに追われている。


ホールスタッフが最初の一皿を運んできた。



前菜は、


🎶真鯛のカルパッチョ オレンジとフェンネル添え、シチリアレモンの香り。

薄く切られた真鯛に、


甘いオレンジ、みずみずしいフェンネル、


ピンクペッパーが彩りを添え、金色のオリーブオイルが静かに輝いていた。






続いて運ばれたサラダは、


🎶ルッコラと生ハム、パルミジャーノ、くるみのサラダ。



爽やかなレモンドレッシングが夏らしい香りを運んでくる。


ダニエーレは白ワインを口に含みながら言った。


「今日も美しい料理ですね。」


キアーラは微笑む。


「自然の恵みをそのまま味わっているようです。」


やがて薪窯から焼きたてのピッツァが運ばれてきた。




🎶ポルチーニ茸とモッツァレラ、イタリア産生ハム、ルッコラをのせた薪窯ピッツァ。




焼き上がった生地の香ばしい香りに、


ポルチーニ茸の豊かな香りが重なり、テーブルいっぱいに広がった。


ダニエーレが一切れを口に運ぶ。


「前回はOne Healthという考え方についてお話ししました。


今日は、その考え方がなぜ必要なのか、


人獣共通感染症を例にお話ししましょう。」


キアーラは静かにうなずいた。


「その中でも、日本では北海道で知られている病気、


エキノコックス症ですね。」

「ええ。」


ダニエーレはワイングラスを静かに置いた。


「以前、私の知人の医療従事者から聞いた実話です。


ある男性が友人たちと山菜採りへ出かけました。


山の奥には、透き通るほど美しい川が流れていたそうです。


仲間は『そのまま飲まないほうがいい。』と声を掛けました。


しかし男性は、『こんなにきれいな水なら大丈夫だよ。』と言って、


そのまま飲んでしまいました。」


そして、症状がでるまで、放置、、

   

 (ああーまるで熊のプーさんのおとぎ話を信用しているようだ、

実際、自然の中で育った熊が、人間にとって、

とても恐ろしい猛獣のように、

綺麗に見える山のお水も

どんな寄生虫がいるか・・・)




店内には静かなジャズが流れている。


キアーラは静かに耳を傾けた。


「その後、詳しい検査でエキノコックス症と診断されたそうです。」


ダニエーレは続けた。


「エキノコックスは、とても小さな寄生虫です。


主にキツネや犬などの体内で成長し、


その虫卵が自然環境へ広がることがあります。


川の水そのものだけでなく、


周囲の環境が汚染されている場合もあるため、


美しく見える自然が必ずしも安全とは限らな


いのです。」


キアーラは静かに言葉を続けた。


「感染しても、すぐに症状が現れるわけではありません。


何年もの間、気づかないこともあります。


しかし、早く見つけることができれば、


【「治療につながる」】可能性があります。


だからこそ、予防と定期的な検査が大切なのですね。」


ダニエーレはうなずいた。


「One Healthは、人間だけの健康ではありません。


野生動物の健康。


家畜やペットの健康。


そして自然環境。


その三つを一緒に守ることが、私たち自身を守ることにつながります。」


食事も終盤となり、ドルチェが運ばれてきた。


白桃のパンナコッタ。


白桃のコンポートが美しく飾られ、小さなミントの葉が涼しさを添えている。


隣には香り高いワイン。




甘い香りに包まれながら、キアーラは穏やかに微笑んだ。


「今日のお話で改めて感じました。


自然は私たちに多くの恵みを与えてくれます。


でも、その自然を正しく理解し、敬うこともまた、


人が自然と共に生きるために必要なのですね。」


ダニエーレも静かにワインを口にした。


「One Healthとは、病気になってから考えるものではありません。


病気にならない社会を、人・動物・環境が力を合わせて


築いていこうという考え方なのです。」





La Stregaには、その夜も料理とともに、


人と動物、そして自然が支え合う未来について


語り合う穏やかな時間が流れていた。


窓の外には、ローマの夕焼けから夜空へと移り変わる


美しい景色が広がっている。


ダニエーレは最後に静かに言った。


「美しい自然を未来へ残すこと。


その自然の中で、人も動物も健やかに暮らせること。


それこそが、One Healthという言葉に込められた、


本当の願いなのでしょう。」


二人は静かにうなずき、温かなドルチェの余韻とともに、


その夜の語らいを心に刻んだ。



つづく



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