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2040東京【KK線】

x Happy
10月5日
読了時間: 2分


2040年、ローマのLa Strega。


一組の日本人客が、出張の仕事を終えて遅い夕食を楽しんでいた。







テーブルにはキアンティ・クラシコ。


パルミジャーノ、生ハム、オリーブ。


ポルチーニ茸のタリアテッレから、まだ湯気が立っている。


男性がワインを飲みながら言った。


「ローマも歩くと楽しい街だけど、東京もずいぶん変わったよ」


「KK線のこと?」


「そう。僕が八丁堀に住んでいた頃は、あそこは車が走る高速道路だった」


八丁堀から京橋、銀座へ。


仕事へ急ぐ人。


夜遅くまで灯るビル。


高架を流れていく車。


あの頃の東京は、いつも少し急いでいた。


「それが今では、あの高速道路を人が歩いているんだからね」


男性は嬉しそうに笑った。


かつてのKK線には木々が育ち、ベンチが置かれ、人々がゆっくり歩く。


昔は車で通り過ぎるだけだった銀座の景色を、今は立ち止まって眺めることができる。


🎼「日本に帰ったら、朝、散歩するよ♪」


「朝から?」


「ああ。朝の散歩は体にもいいしね。それに、人の少ない時間に歩きたいんだ」


京橋から銀座へ。


緑の中を歩き、ときどき立ち止まる。


そして高架の上から、八丁堀の方向を見る。


🎼「昔住んでいた家を探すの?」


男性は首を振った。


「たぶん、昔の東京を思い出すんだと思う」


向かいの客が笑った。


「ローマまで来て、東京の散歩の話?」


「ローマにいるから思い出すんだよ」


古いものを壊さず、今の暮らしの中で使い続ける。


ローマの街を歩いていると、そんなことを考えるという。


「KK線も似ているよね。道路を消してしまうんじゃなくて、次の役割を与えた」


車のための道から、人のための道へ。


速く通り過ぎる場所から、ゆっくり時間を過ごす場所へ。


🎼「道路の第二の人生だな」




ちょうどそのとき、ウエイトレスが


エスプレッソと白いレモンクッキーを運んできた。


男性は小さなカップを持ち上げた。


「日本に帰ったら、早起きしよう」


「本当に起きられる?」


「それは……東京に帰ってから考えるよ」


二人は笑った。


ローマの夜は、まだ長い。


けれど男性の頭の中には、もう東京の朝があった。





八丁堀から京橋へ。


そして、かつて車が走っていたKK線へ。


朝の光の中、緑の道をゆっくり歩く。


昔は東京を急がせた道路を、


今度は自分の健康のために、ゆっくり歩く。


そんな東京への帰国を楽しみにしながら、男性はエスプレッソを飲み干した。 



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