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土地の第二の人生(10月10~12)

x Happy
10月4日
読了時間: 3分

更新日:10月5日


ローマ、La Strega。


一組のお客様は、2026年festivalの話をしている。




暖炉には小さな火があり、テーブルには冷えたヴェルディッキオ。





焼いたアーティチョークにパルミジャーノが薄く削られていた。


一人の客が言った。


「土地にも、第二の人生があると思う?」


「人間じゃなくて、土地に?」


「東京に面白い場所がある。海の森公園だよ。」


東京湾につくられた埋立地。


かつてそこには、東京から大量のごみなどが運ばれてきた。


しかし、人はその土地を捨てなかった。


土をつくり、苗木を育て、 多くの人々が木を植えた。


長い年月をかけて、 埋立地は緑の森へと姿を変えていった。


「でも、森をつくって終わりじゃないんだ。」


「まだ続きがあるの?」




そこへ、ポルチーニ茸のタリアテッレが運ばれてきた。


男はスマートフォンをテーブルに置いた。


画面にはこう書かれていた。





TOKYO ISLAND 2026


10月10日―12日


海の森公園


「音楽フェス?」


「そう。氣志團、スガ シカオ、OKAMOTO'S、Kroi。それにACIDMAN、KANA-BOON、ZAZEN BOYS、flumpool……いろいろなアーティストが、この森に集まる。」


女性は笑った。


「私はスガ シカオ。」


「僕はZAZEN BOYS。」


「三日間行く?」


「土地には第二の人生があっても、僕の体力には第二の人生がない。」


二人は笑った。


しかし男は、もう一度画面の写真を見た。


「考えてみれば、不思議だよ。」


昔は、 東京から“いらなくなったもの”が運ばれてきた場所だった。


今度は逆に、 東京から人がやって来る。


音楽を聴く。 食事をする。 飲み物を買う。 バスや電車に乗る。 遠くから来た人はホテルに泊まる。


一つの土地に人が集まることで、 その周囲でもお金が動き始める。


女性がワインを一口飲んだ。


「つまり、森をつくることは環境のためだけじゃない?」


「そうだと思う。」


男は答えた。


「森そのものがお金を生むわけじゃない。


森が、人が動く理由をつくる。


それが、長い時間をかけて経済的な価値にもなっていく。」





食事の最後に、 小さなティラミスと二杯のエスプレッソが運ばれてきた。


支配人は二人の話を聞いていた。


「土地というものは、不思議ですね。」


「どうして?」


「その土地が昔、何だったかより――」


支配人はエスプレッソを置いた。


「これから何になれるかのほうが、大切なのかもしれません。」


二人は黙った。


埋立地だった場所に木を植える。


木が森になる。


森に人が集まる。


そして2026年10月、 そこに音楽が鳴る。


一度役割を終えたように見えた土地が、 別の価値を持って、もう一度動き始める。


女性が言った。


「10月、東京へ行こう。」


「フェスを見に?」


「それもある。」


彼女は微笑んだ。


「土地の第二の人生を見に行くの。」


La Stregaの暖炉で、 薪が静かに弾けた。


人にも第二の人生がある。


建物にもある。


そして――


土地にも、第二の人生がある。


つづく


著作権ここにあり、転載不可

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