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麦にも、四季にも、乾杯を

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6 日前
読了時間: 6分

ローマの秋の夜、La Strega。


窓の向こうでは、雨上がりの石畳に街灯がにじんでいた。


ジュリアとフランチェスカの前に、二つのパスタが運ばれてきた。


ポルチーニ茸のタリアテッレ。茸とバラ―の良い香り
ポルチーニ茸のタリアテッレ。茸とバラ―の良い香り


ジュリアには、ポルチーニ茸のタリアテッレ。


温かな湯気に、茸とバターの香りが重なる。



ポモドーロ(イタリアでトマトという意味)
ポモドーロ(イタリアでトマトという意味)


フランチェスカには、スパゲッティ・ポモドーロ。


赤いトマトソースの上に、バジルの葉が一枚、静かに揺れていた。


「日本の金麦が、ビールになったんですって」


ジュリアが言うと、フランチェスカはフォークを止めた。


「私が日本で好きになった、あの金麦?」


「そう。十月六日から、新しい金麦になったの」


「困るわ。あの軽い飲み口が好きだったのに。


ビールになると、苦くて重くなるのかしら」


ジュリアは首をかしげた。


「麦のうまみや飲みごたえは増やしたそうよ。


でも、これまでの味の骨格と、澄んだ後味は大切にしているんですって」


「名前だけ変わったわけではないのね」


「ええ。日本でビールと発泡酒の税率が同じになったのを機に、


麦芽の割合を増やして、製法も変えたの」


フランチェスカは、パスタをゆっくり巻いた。


「税金の話が、冷蔵庫の中まで来るなんて」


「イタリアなら、まず食卓で議論になるわね」


「それから?」


「パスタが冷めたことについて、もう一度議論するの」


二人は笑い、熱いうちにひと口食べた。


ポルチーニの香りが、ジュリアの口の中に広がった。


「でも、新しいほうがおいしいと思うかは、飲んでみないと分からないわね」


「そうなの。【発泡酒の金麦を好きだった私】としては、少し寂しいのよ」


「好きだったのは、缶に書かれた分類?」


フランチェスカは少し考えた。


「違うわ。夕食と一緒に飲める軽さ。


それから、日本で滞在していた部屋の、小さな冷蔵庫」


「なら、新しい金麦にも、その席を一度あげてみたら?」


「気に入らなかったら?」


「正直に言えばいいのよ。私たち、パスタのゆで加減については遠慮しないでしょう」


「確かに。恋人には黙っていても、柔らかすぎるスパゲッティには黙っていられないわ」


フランチェスカは笑って、もう一度フォークを回した。


「このポモドーロは、ちょうどいい」


「その感想、恋人にも時々言ってあげて」


窓の外で、教会の鐘が鳴った。


「ところで、【金麦は季節で味が変わる】のよね?」


「ええ。春夏秋冬、一年に四回、味わいを整えているの。


新しい商品の説明にも、季節ごとの味づくりが載っていたわ」


「ビールになっても、四季は残るのね」


ジュリアはうなずいた。


「これまでの考え方では、


春は軽やか、


夏は爽やか、


秋はまろやか、


冬は豊か。


金麦らしさを保ちながら、麦の味わいや刺激のバランスを調整しているそうよ」


🎼金麦のHPに書いてるわ。☝


フランチェスカは、自分の皿とジュリアの皿を見比べた。


♬「春なら、アスパラガスのパスタと飲みたい。


♬夏なら、このポモドーロ」


♬「秋ならポルチーニね」


♬「冬はラグー。鍋を長く煮込んで、外が寒いほど嬉しくなるようなもの」


(ラグーは肉や野菜をじっくり煮込んで作るソースで、イタリアではパスタによく

あわせます)


「一年分の献立ができたわ」


「私たちは四季を理解するのが早いのよ。全部、パスタにすればいいんだから」


ジュリアは声を立てて笑った。


「日本の四季に、イタリアの台所がついてきたわね」


二人の皿から、少しずつパスタが減っていった。


「もう一つ、芳醇という新商品もあるんでしょう?」


「名前は〈豊潤〉よ。🎵2026年十月十三日発売だから、


まだこれから。麦のコクや飲みごたえを楽しむラガービールですって。


後味のすっきりした感じも大切にしているそう」


「冬の金麦とは違うの?」


「別の商品なの。季節の調整とは別に、🎵普通の金麦、🎵糖質オフ、🎵豊潤という


選択肢があるのね」


フランチェスカは少し身を乗り出した。


「それなら、豊潤にはラグーを合わせてみたいわ」


「軽い飲み口が好きだと言っていなかった?」


「好きなものが一つしかないなんて、誰が決めたの?」


「ごもっとも」


「靴だって、歩きやすいものが好き。


でも、きれいな靴を見ないことにはならないでしょう」


「ただし、ビールには試着室がないわね」


「だから、小さい缶から試すのよ」


ジュリアはうなずいた。


「たいへん合理的な買い物ですこと」


しばらくして、フランチェスカが尋ねた。


「カロリーオフの金麦も、新しくなったの?」


🎼「今回ビールになったのは〈糖質75%オフ〉よ。普通の金麦と比べて糖質が少ないという意味で、カロリーが75%減るわけではないの」🎼


「そこ、同じことだと思っていたわ」


「アルコールにもカロリーがあるもの。


カロリーが気になるなら、缶の栄養表示を確かめたいわね」


フランチェスカは、自分のパスタを見下ろした。


「では、糖質オフを選んだら、


このスパゲッティを二皿食べても帳消し、とはならないのね」


「ならないわ」


「残念。とても美しい計画だったのに」


「美しい計画には、たいてい計算が抜けているのよ」


二人は笑った。


「でも、その糖質オフは軽やかな後味も大切にしているそうだから、


あなたの候補になるかもしれないわ」


「ええ。まず普通の金麦を試して、


それから糖質オフ。


豊潤はラグーの日に」


「三つとも試すのね」


「もちろん。パスタも一種類だけで判断しないでしょう?」


ジュリアは、最後のタリアテッレをフォークに巻いた。


「女性だから軽いもの、という決め方でもないわね」


「ええ。私は軽い飲み口が好き。でも、隣の女性は深いコクが好きかもしれない。自分の舌で選びたいわ」


レモンタルトとレモンクッキー
レモンタルトとレモンクッキー



皿が下げられ、二杯のエスプレッソが置かれた。


その脇には、小さな白いレモンクッキー。


フランチェスカは、窓の外を見た。


「好きだったものが変わると、少し心配になるのね」


「ええ」


「でも、変わったものを好きになることもある」


ジュリアはカップを持ち上げた。


「次に日本へ行ったら、飲み比べましょう」


「春に行く? 夏に行く?」


「秋もいいわね」


「冬のラグーはどうするの?」


ジュリアは笑った。


「あなた、日本へ四回行く理由を作っているでしょう」


「違うわ。四季を丁寧に研究しているの」


「研究費は?」


「そこはまだ、研究していないの」


La Stregaの窓に、二人の笑顔が映った。


冷蔵庫の中の小さな一缶から、来年の旅の話が始まっていた。 




解説


今宵は

架空のビールのお話でした。


日本の酒税改定で、いろんな会社が


発砲酒をビールに変えたようです。


今回はサントリー(HP参考にしました)金麦のお話を書いてみました。


お酒は20歳になってから。。。。



つづく



著作権ここにあり、転載不可

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