2026 5月10日母の日
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- 5月10日
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夕暮れの鐘が「コトン、コトン」と鳴るころ、
イソッタは、レモン色の小さなランプを片手に、不思議の国の石畳を歩いていました。
今日は風が少し冷たく、空には紫色の雲が浮かんでいます。
「こんな日は、とびきり美味しい夕食が必要だわ」
そうつぶやくと、白うさぎが突然、湯気を立てながら走ってきました。
「急いで! 急いで! 今夜は“月夜の晩餐会”なんだ!」
うさぎの背中の籠からは、焼きたてパンの香り。
ローズマリーとバターの香りが、ふわりと夜風に混ざります。
イソッタが辿り着いたのは、森の奥にある小さなレストラン
――《星屑亭》。
扉を開けると、そこは黄金色の光で満ちていました。
暖炉の前では、帽子屋が大きな鍋をかき混ぜています。
「本日のスープは、海老のビスクだよ!」
ぐつぐつ煮えた鍋からは、甘い海老の香り。
トマトと玉ねぎがゆっくり溶け込み、仕上げに生クリームが一筋。
チェシャ猫は、にやにや笑いながらパスタを運んできます。
「こちら、“月明かりのカルボナーラ”。胡椒は星の数ほどどうぞ」
湯気の立つパスタには、濃厚な卵。
カリカリに焼いたパンチェッタ。
黒胡椒が雪のように舞い、チーズがとろりと溶けていました。
そして中央の大皿には――
レモンを絞った白身魚のソテー。
春のアスパラ。
バターで焼いた小さなじゃがいも。
赤ワインで煮込んだ玉ねぎ。
「わあ……」
イソッタの目がきらきら輝きます。
すると奥から、眠そうなヤマネが小さなデザートを持ってきました。
「最後は……ティラミス。今日は特別に、エスプレッソを少し強めにしたよ」
ひと口食べると、
苦味と甘さが、まるで夜空と月みたいに溶け合いました。
外では雨が静かに降り始めています。
でも店の中は、笑い声と料理の香りでぽかぽかです。
帽子屋がワイングラスを掲げました。
「美味しい夕食っていうのはね、
お腹だけじゃなく、“心”を温める魔法なんだよ」
イソッタは頬を赤くしながら、もう一口カルボナーラを食べました。
すると不思議なことに、
疲れていた今日の出来事が、全部ふわりと軽くなっていったのです。
窓の外では、月がゆっくり顔を出していました。
今夜の不思議の国は、
バターと胡椒と、優しいスープの香りで満ちていたのでした。
解説
イソッタは母との思い出を回想しながら、
食事をしました。


