満月
- x Happy
- 6月4日
- 読了時間: 3分
偶然が重なる話
〜イソッタとクラウディオの奇跡〜
イソッタは、夜になるとよく星空を見上げる癖があった。
忙しい一日が終わり、温かいハーブティーを片手に窓辺へ座る。
そして考える。
「この地球って、本当に不思議だなあ」
何十億年も前。
宇宙を漂っていた無数の隕石が地球に衝突し、
海ができ、山ができ、生命が生まれた。
どれか一つでも違っていたら。
ほんの少し軌道がずれていたら。
今の世界は存在していなかったかもしれない。
そんなことを考えながら、イソッタはお気に入りの音楽を流した。
柔らかなメロディー。
「もし世界が終わる日が来ても、君の隣で笑っていたい」
そんな優しい想いを歌う曲だった。
イソッタはその歌が好きだった。
人生は長いようで短い。
『だからこそ、今という時間を大切にしたい。🎵』
そんな気持ちになれるからだ。
その頃、遠く離れた北イタリアの小さな町では、
クラウディオという青年が同じ曲を聴いていた。
クラウディオもまた、星を見るのが好きだった。
仕事帰りにカフェへ立ち寄り、
エスプレッソを飲みながら夜空を眺める。
そして考える。
「人が出会う確率って、どれくらいなんだろう」
世界には80億人以上の人がいる。
その中で、一人の誰かと出会い、言葉を交わし、笑い合う。
それはきっと宝くじより難しい。
ある日。
偶然が重なった。
『イソッタが投稿した一枚の写真』
北海道の澄んだ空に浮かぶ月だった。
それを、たまたまクラウディオが見つけた。
本当に偶然だった。
何万枚もの写真の中から。
何億人もの人の中から。
クラウディオはその一枚を見つけた。
「なんて綺麗な月なんだろう」
思わずメッセージを送る。
するとイソッタから返事が来た。
それもまた偶然。
もしその日、忙しかったら。
もし通知に気付かなかったら。
二人は言葉を交わすこともなかった。
それから少しずつ話をするようになった。
好きな音楽。
好きな料理。
好きな景色。
不思議なことに、共通点がたくさんあった。
ある夜、イソッタは言った。
「地球って隕石がぶつかって今の姿になったんだって。」
クラウディオは笑った。
「じゃあ、僕たちが出会ったのも宇宙規模の偶然かな。」
イソッタも笑う。
「そうかもしれないね。」
窓の外には満月が輝いていた。
何十億年もの偶然が重なって生まれた地球。
その地球の上で。
イソッタとクラウディオは同じ月を見上げている。
人生の終わりがいつ来るかは誰にも分からない。
だからこそ。
美味しい食事を食べて。
好きな音楽を聴いて。
大切な人と笑う。

その時間こそが宝物なのだろう。
遠い宇宙から見れば、人の一生は一瞬。
けれど、その一瞬の中にある出会いは、
星が生まれるほど尊い奇跡なのかもしれない。
今夜もイソッタは空を見上げる。
そして小さく微笑む。
「こんな偶然なら、何度でも重なってほしいな。」
満月は静かに輝き続けていた。
つづく
解説
ブルーノマーズとレディガガの
Die With a Smile の歌をイメージして
書いてみました。


