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MOE'S CAFE

  • x Happy
  • 4月5日
  • 読了時間: 3分

『モーの酒場の夜 ― アリスの迷い込み』


その夜、扉はいつもと少し違う音を立てた。


ぎい、ではなく――


“すうっ”と、空気が裂けるように開いたのだ。


「……なんだ今の音は」


モー・シズラックが眉をひそめる。


振り返った先に立っていたのは、


青いドレスの少女――


アリスだった。


「……ここは、どこかしら?」


店の空気が、一瞬で変わる。


「ここは酒場だ。迷子は帰りな」


モーはぶっきらぼうに言うが、内心では明らかに動揺していた。


「酒場……?」


アリスは店内を見渡す。


古びたカウンター。


曇ったグラス。


そして――


「ねえ、あの方はどうして同じものを何度も飲んでいるの?」


彼女の視線の先には、


ホーマー・シンプソンがいた。


「それが人生だからだよ」


ホーマーは振り向きもせずに答える。


「人生?」


アリスはゆっくりと彼の隣に座る。


「あなたの世界では、飲み物は大きくなったり小さくなったりする?」


彼女は真剣に聞いた。


ホーマーは一瞬だけ考え――


「それはしないが、気分は変わるな」


そう言って、グラスを差し出す。


「飲んでみるか?」


モーが慌てて止める。


「おい!未成年に出すわけには――」


だがアリスはすでにグラスの匂いを嗅いでいた。


「不思議ね…これは“現実”の匂いがする」


その言葉に、店の全員が少しだけ黙る。


奥で笑っていた


バーニー・ガンブルでさえも。


「現実、か……」


モーは小さく呟く。


「それはこの店じゃ、一番薄まってるもんだ」


アリスは首をかしげる。


「でも、みなさん少し楽しそうよ?」


ホーマーが笑う。


「楽しいんじゃない。忘れてるだけだ」


「忘れる……?」


アリスはしばらく考えてから、静かに言った。


「それって、とても大切な魔法ね」


その瞬間、店の空気がほんの少しだけ柔らかくなる。


モーはグラスを置き、ぽつりと言う。


「嬢ちゃん、お前の世界はどうなんだ」


アリスは微笑んだ。


「めちゃくちゃよ。意味なんてないことばかり」


「でも――」


彼女はカウンターを軽く叩く。


「意味がないから、面白いの」


沈黙のあと、ホーマーが笑い出す。


「それ、いいな」


バーニーもつられて笑う。


モーはため息をつきながらも、少しだけ口元を緩めた。


そのとき――


再び、扉が“すうっ”と開く。


「もう行かなくちゃ」


アリスは立ち上がる。


「ねえ」


ホーマーが呼び止める。


「また来るか?」


アリスは振り返り、いたずらっぽく笑った。


「迷ったらね」


そして彼女は、夜の向こうへ消えた。


扉は元通り、ぎい、と音を立てて閉まる。


しばらくして――


「なぁモー」


ホーマーが言う。


「今の、夢か?」


モーはグラスを拭きながら答える。


「違うな」


「夢より、ちょっとだけマシな何かだ」


ネオンは、いつもと同じように瞬いている。


けれどその夜の酒場には、確かに――


ほんの少しだけ、


“不思議”が残っていた。 


解説

MOSバーガーと仮想のスプリングフィールドの町の

MOE'S カフェを混同する友人がいました

 
 
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