NISEKO 羊蹄山
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- 5月24日
- 読了時間: 3分
更新日:5月26日
雪の気配が残る北海道の夜。
倶知安の町を吹き抜ける風は冷たく、
遠くには羊蹄山の
白い姿が静かに浮かんでいました。
小さな居酒屋の暖簾をくぐると、
炭火の香りと、日本酒のやわらかな匂いが
混ざっています。
慎之介はカウンターに腰を下ろし、
深いため息をつきました。
「最近、地面師の事件を読んでいて……
人間って マジで
『怖い』なと思ってしまって」
店主は黙って頷きます。
「土地を売っていない本当の所有者が、
何度も書留郵便で“売っていない”と知らせていたのに、
逆に買いたいほうは
“売買を邪魔している”と誤認された話でしょう」
慎之介は驚きました。
「知っているんですか」
「ええ……。
本当に怖いのは、嘘だけじゃない。
人の思い込みと、確認を急ぐ心です」
店主はゆっくりと
一升瓶を取り出しました。
『辛口 が いいですか?』

慎之介はこころをみすかされているようだった。
『辛口のおすすめは、このお酒』
ラベルには、力強く
「二世古」
と書かれていました。
二世古。NISEKO
店主は徳利に酒を注ぎながら、
静かに語り始めます。
「二世古の酒造りは、決して派手な道ではなかったんです。
北海道の寒さの中で、“本当に旨い酒を造りたい”という人たちが、
何度も苦労を重ねてきた」
外では雪混じりの雨が窓を叩いています。
「昔、北海道の酒は
“寒い土地の酒”として生きる、
この倶知安の水――
羊蹄山の伏流水は、
とても『美しい』
慎之介は杯を持ちます。
透明な酒。
香りには、
どこか土の力強さがある。
「派手さではなく、まっすぐ突進するような辛口。
それが二世古なんです」
店主は少し笑いました。
「地面師の話と似ているかもしれません。
見た目や勢いだけで判断すると、
本当のことを見失う。
でも時間をかけて向き合うと、
“本物”は静かに残る」
主人公はゆっくり酒を飲みました。
最初は鋭い
辛口。
けれど後から、
米の優しい甘みが戻ってくる。
まるで、不器用でも誠実に生きてきた人のようでした。
店主は続けます。
「酒蔵ってね、毎年同じことを繰り返しているように見えて、
毎年戦っているんですよ。
気温、
水、
米、
人の技術。
全部が少しずつ違う」
「だから、本物の酒には、
『人の焦りじゃなく』“積み重ね”が入るんです」
主人公は窓の外を見ました。
地面師の事件。
誤認。
焦り。
確認不足。
そんな人間の暗い部分を考えていた夜でした。
でも今、手の中には、
長い年月をかけて真面目に造られてきた酒がある。
それだけで、少し救われる気がしたのです。
店主は最後に小さく言いました。
「世の中には、人を騙すための技術もある。
(最近巧妙な詐欺事件が多発のニュースがあとをたたない、注意喚起必要)
でも同じくらい、
“人を安心させるための技術”もあるんですよ」
徳利から立つ湯気の向こうで、
『羊蹄の魂』に見守られた、
二世古の文字が、
静かに灯りに照らされていました。
つづく
解説
北海道の倶知安町にある
ニセコ酒造のあこがれを込めて
純米吟醸、辛口のお酒をお供に
お話を考えました。


