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『②白龍昇と執事―地球をみたい』

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8月15日
読了時間: 7分

更新日:8月20日


①のつづき


もう夜になっていた。


「そういえば、お名前を伺っておりませんでした」



白龍は夜空を見上げた。



白い身体に月光が流れる。



♪「白龍昇、ハクリュウショウ」



🎵「白龍昇様」



「様はいらない」



「職業柄、どうしても・・・」



白龍昇は鼻を鳴らした。



「好きにしろ」



巨大な身体が浮かび上がる。



屋敷が小さくなる。



街が小さくなる。



山が低くなる。



海岸線が見える。



やがて雲を突き抜けた。



青かった空が紺色になり、



紺色が黒になった。





星が増える。



そして――



地球が丸くなった。






執事は言葉を失った。



白龍昇も何も言わない。



二人の前に、青い地球が浮かんでいる。



雲が渦を巻き、海が太陽の光を反射していた。



大陸が静かに浮かんでいる。



やがて白龍昇が尋ねた。



「どうだ」



執事は答えた。



「思っていたより、ずっと青いです」



「そうか」



「そして――」



執事は小さくなった故郷を見つめた。



「思っていたより、ずっと美しい」



白龍昇は静かに地球の周りを旋回した。



「あなたが暮らしていた星だよ」



♪「暮らしていた、じゃなくて、まだ暮らしてる。( ̄∇ ̄;)ハッハッハ」



「ああ、そうだった」



白龍昇は笑った。



「まだ帰るんだったね」





その言葉を聞いた途端、地球が急に愛おしく見えた。



「後ろを見て」




振り返った。


月の地平線の向こうに



小さな青い地球が浮かんでいた。



さっきまで自分がいた場所。



家も、街も、知っている人も、



全部あの青い球の中にある。



「不思議でしょう」



白龍昇が言った。



「地球にいると世界は巨大に感じる。でも離れてみると、こんなに小さい」



執事は答えた。



「でも、小さいから大切なのかもしれないね」



白龍昇は何も言わなかった。



ただ、少し嬉しそうに目を細めた。




-----ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

♬最初に向かったのは月だった。


灰色の大地。


無数のクレーター。


音のない世界。


白龍昇は月面すれすれをゆっくり飛んだ。








---------------------



この夜からだった。白龍昇が宇宙へ行くとき、


その背中に黒い燕尾服の執事が乗るようになったのは・・・・・。





月へ。



火星へ。



木星へ。



土星へ。



そして、いつか銀河の彼方へ。



ただし、一つだけ決まりができた。



長い宇宙旅行から地球へ帰った日は――



【必ず白桃を用意すること。】


後に執事は知ることになる。



🎼雲の水を飲み、



🎼月の光を食べ、




🎼星の光さえ力に変える神秘の白龍が、






地球で一番楽しみにしているものは、



宇宙でも黄金でもなく――


【よく冷えた白桃だった。 】



和室にて好物の白桃を戴く・・・
和室にて好物の白桃を戴く・・・







♪次は火星。



赤い大地を白龍が飛ぶ。



谷を越え、砂嵐を抜ける。



かつて水が流れていた痕跡の上を通りながら、白龍昇が言った。



「星も変わる」



「人間と同じ?」



「そう。永遠に同じ姿ではいられない」







人類の移住の場として注目・・・・
人類の移住の場として注目・・・・




🎵そして巨大な木星。



目の前いっぱいに広がる縞模様。



大赤斑では、人間の想像を超える巨大な嵐が渦巻いている。

木星
木星




執事は白龍昇のたてがみを握った。



「近づきすぎじゃない?」



「怖い?」



「ちょっと」



「私も」



「龍なのに?」



♪「龍だって木星は怖いさ」

(木星が怖い詳しい話は、木星のお話でつづきます)


二人で笑った。



宇宙の真ん中で笑うなんて、不思議だった。


距離をとれ
距離をとれ




🎼そして土星。




その姿が見えた瞬間、執事は言葉を失った。



黄金色の惑星。



その周囲を取り囲む、美しい輪。



白龍昇は輪に沿って飛んだ。



近くで見ると、それは一本の輪ではない。



無数の氷や岩が、太陽の光を受けながら土星の周囲を巡っている。



白龍昇の白い身体にも、その光が反射する。



白と金。



まるで宇宙そのものが巨大な屏風絵になったようだった。


土星
土星

金屏風
金屏風

「地球に帰ったら、これをどう説明しよう」



「説明しなくていい♪【こころの中だけに秘密に】」



「どうして?」



「美しいものには、【言葉が追いつかない】こともある♪」



さらに進む。



♪青緑色の天王星。


天王星
天王星

「天王星の青緑色は、海ではないのだよ、大気に含まれるメタンが赤い光を吸収することで見える色。」


白龍昇が執事に言う。(続きは天王星のお話にて)







そして、



♪深い青色の海王星。








太陽は、もう遠くの明るい星のようだった。



ここまで来ると、地球は見えない。



人間の声もない。



時計もない。



仕事もない。



約束もない。



昨日も、明日もないように感じる。



ただ、



宇宙がある。



執事は白龍昇の背中に横になった。





ちゃんと息ができる。



龍のたてがみが、静かに揺れている。



「ねえ、白龍昇」



「何?」



「人間って、いつか死ぬでしょう」



「そうだね」



「悲しい?」



白龍昇は、しばらく答えなかった。



そして言った。



「終わりがあることと、悲しいことは、同じではないよ」



「どういう意味?」



「旅だって、帰るから旅なんだ」



執事は黙った。



「永遠に旅を続けたら?」



「それはもう旅ではなくなる」



白龍昇は遠い太陽を見つめた。



「人間は地球に少しだけ滞在する。そして、いつか去っていく」



「少しだけ?」



「宇宙から見れば百年だって♪一瞬だよ」



そうかもしれない。



「だからこそ」



白龍昇は続けた。



「見られるものは見ておけばいい」



「行けるところには行けるのでしょうか?」



「そう」



「好きな人には好きと言うのでしょうか?」



「それもいい」



「美味しいものも、たらふく食べたほうがいいですね?」



白龍昇は笑った。



「それはかなり大事だ、もういろんなものを食べて楽しむぞ!!」



「では帰りましょうか?」



執事が言った。



「もういいのか?」



「はいよろしいです、おねがしいます。」



不思議だった。



宇宙へ出る前より、地球へ帰りたくなっていた。



白龍昇は身体を反転させた。








海王星。



天王星。



土星。



木星。



火星。



そして――



遠くに青い点が現れた。



地球。



近づく。



少しずつ大きくなる。



青が見える。



白い雲が見える。



海が見える。



執事は白龍昇の首に手を回した。



「きれいですね白龍昇さま」



「行く前にも見ていたでしょう?」



「・・・違うのです。」



「何が?」



🎼「今は、帰る場所として見ています」



白龍昇は何も言わなかった。



地球の大気へ入る。



白龍の身体が金色の光に包まれる。



まるで巨大な流れ星だった。



雲を抜ける。



街の灯りが見える。



そして白龍昇は、出発した場所へ静かに降りた。



執事は背中から降りた。



地面を踏む。



空気を吸う。



風が頬に触れる。



いつもと同じ風だった。



なのに、



昨日までとは違って感じた。



白龍昇が言った。



「どうだった?」



執事は空を見上げた。



「宇宙を見に行ったのに……」



「うん」



🎼「地球が一番きれいだったようにおもいます」



白龍昇は静かに笑った。



「そう言うと思った」♪



そして天へ昇ろうとした。



「待ってください白龍昇さま」



白龍昇が振り返る。



執事は尋ねた。



「また連れていっていただるのか、お願いしてもよろしいでしょうか?」



「もちろん」



「次はどこへ?」



白龍昇は夜空のずっと向こうを見た。



太陽系の、その先。



🎼「今度は銀河を見に行こう」



「遠いでしょうか?」



「ものすごく」



「帰ってこられるでしょうか?」



白龍昇は笑った。



「私の背中に乗っている限り、大丈夫だよ。任せて。」



そして白龍昇は舞い上がった。



白い身体が月明かりを受け、金色の光をまといながら、雲の彼方へ消えていく。







執事は、その姿が見えなくなるまで空を見ていた。



人はいつか、この地球にさよならを言わなければならない。



それがいつなのかは、誰にも分からない。



だから、急いで別れを考える必要なんてない。



まだここにいるのだから。



まだ空を見られる。



まだ海を見られる。



まだ誰かと笑える。



まだ知らない場所へ行ける。



そして、もし白い龍が迎えに来たなら――



宇宙だって見に行けばいい。



だって私たちは、いつか地球を去る旅人なのだから。





金屏風
金屏風

桃のかき氷 白龍昇の大好物
桃のかき氷 白龍昇の大好物



つづく

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