たけのこのお刺身
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- 4月23日
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更新日:5月2日
春のやわらかな風が吹くある日、不思議の国のアリスは、白ウサギを追いかけるのをやめて、ふと山のほうへ足を向けていました。
「今日は、なんだか土の匂いがするわ」
森を抜けると、そこにはまだ少し湿った山の斜面。足元の土はふかふかで、ところどころに小さな“頭”が顔を出しています。
「まあ、帽子みたい!」
それは、たけのこでした。
通りがかった山の精のような老人が、にこりと笑います。
「それは春のごちそうだよ。そっと掘ってごらん」
アリスは小さなスコップを借りて、土をやさしく掘り始めました。ぐっと力を入れると、するり、と白くてつややかなたけのこが現れます。
「わあ、まるで宝物みたい!」

いくつか収穫すると、山の上にぽつんとある小さな小屋へ案内されました。そこには、澄んだ水と、包丁と、木のまな板。
「さあ、今度は料理だ」
老人に教わりながら、アリスはたけのこの皮を一枚ずつ丁寧に剥いていきます。中から現れるのは、柔らかく、ほんのり甘い香り。
「こんなにきれいなのね…」
湧き水でさっと洗い、薄く、薄く切っていく。包丁がすっと通るたびに、しゃくっ、しゃくっと心地よい音が響きます。
皿に並べると、まるで白い花びらのよう。
すりおろした生姜と、ほんの少しの醤油。
アリスは一枚、そっと口に運びました。
「……!」
驚いたように目を見開きます。
「やさしい味……森の音がするみたい」
えぐみはなく、ほんのり甘く、みずみずしい。さっきまで土の中にいたとは思えないほどの清らかさ。
山の風が、ふわりと頬をなでました。
「自分で見つけて、自分で作ると、こんなに美味しいのね」
遠くで、白ウサギがまた時計を見ながら走っています。でもアリスは、もう追いかけません。
春の山でしか味わえない、この一皿を、ゆっくりと楽しんでいたからです。



