エスプレッソと抹茶
- x Happy
- 5月1日
- 読了時間: 4分
『アリスと声の国、静けさの国』
ある午後、
アリスが小さな扉を開けると——
そこは、声が花のように咲く国でした。
「まあ、なんてにぎやか!」
石畳の広場に並ぶカフェ。
テーブルには小さなカップ、でも会話はとても大きい。
「ノンノンノン!」
「だから違うってば!」
二人組の人たちは、まるで踊るように話しています。
手はひらひら、目はきらきら、言葉はくるくる。
ジェスチャーが激しい人たちだわ!!!
アリスは首をかしげました。
場所はイタリア ローマのカフェ
「どうしてこんなに楽しそうに“けんか”しているのかしら?」
すると、エスプレッソのカップが小さくささやきました。
「これはね、“けんか”じゃなくて、“生きてる会話”さ」
「まあ!」
そのとき、アリスのポケットの中で
小さな光がぴかっと輝きました。
取り出してみると、それは魔法の通信箱——
WhatsAppでした。
けれど、文字はどこにもありません。
かわりに、小さな再生ボタンがひとつ。
「チャオ!聞いて聞いてね——!」
箱の中から、声が飛び出してきたのです。
笑い声も、ため息も、間の沈黙さえも、
ふわふわと空中に浮かび上がります。
「この国ではね」
後ろから現れたチェシャ猫がにやりと笑いました。
「言葉は“書くもの”じゃなくて、“こぼれるもの”なんだよ」
アリスは感心してうなずきます。
けれどそのとき、
もうひとつの扉が現れました。
そっと開けてみると——
そこは、とても静かな国。
場所は Japanのとあるカフェ
同じようにカフェがあり、同じように人がいるのに、
音はほとんどありません。
カップの触れ合う小さな音。
ページをめくる音。
そして、指先がスマートフォンをなぞる音。
「ここは……静けさの国?」
隣の人が画面を見せてくれました。
「ありがとう」
「了解です」
整った、やさしい、きちんとした言葉。
アリスは思いました。
声の国では、
言葉は風のように自由で、
静けさの国では、
言葉は宝石のように丁寧。
そのとき、再びチェシャ猫が現れます。
「どっちがいいと思う?」
アリスは少し考えて、こう言いました。
「どちらも素敵よ。だって——」
彼女は魔法の通信箱を取り出し、
少し照れながらボタンを押しました。
「こんにちは、アリスです。今ね、不思議な国にいるの——」
声がふわりと空へ舞い上がる。
そしてそのあと、
アリスは静かに文字も打ちました。
“またお話ししましょう”
チェシャ猫は満足そうに笑いました。
「そう、それでいい。
言葉はね、選ぶものじゃなくて、
“使い分ける魔法”なんだから」
声の花が咲く国と、
静けさがきらめく国。
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「アリスとエスプレッソうさぎと抹茶の精』
声の国と静けさの国を行き来したアリスは、
ある日、ふたつの世界が交わる不思議な場所に迷い込みました。
そこには——
小さな丸いテーブルがひとつ。
片側には、黒くて小さなカップ。
もう片側には、やわらかな緑の茶碗。
「こんにちは!」
ぴょこん、とカップが跳ねました。
なんとそれは、エスプレッソのうさぎだったのです。
「ぼくはエスプレッソ!短く、強く、はっきりが大好き!」
続いて、ふわりと風が揺れ、
緑の光が静かに形を結びました。
「ようこそ」
静かに微笑んだのは、抹茶の精。
「私は抹茶。ゆっくり、深く、心を整えるのが好きです」
アリスは目を丸くしました。
「まあ……まるで、あの二つの国みたい!」
エスプレッソうさぎは勢いよく言います。
「そうさ!話すなら一気に!気持ちは今すぐ伝えるべきだよ!」
抹茶の精は、静かに首をかしげます。
「けれど、言葉は一度心に沈めてからでも、遅くはありません」
「遅いよ!」
「急がなくてもいいのです」
ぴょんぴょん、しん……
ぴょんぴょん、しん……
二人のリズムは、まるで正反対。
アリスは少し困ってしまいました。
そのとき、テーブルの中央に
不思議なポットが現れました。
「混ぜてごらん」
どこからともなく、あのチェシャ猫の声。
アリスは恐る恐る、
エスプレッソとうさぎの一滴、
そして抹茶の精のひとしずくを、ポットに入れました。
すると——
ふわり、と香りが広がります。
強さと、やさしさ。
速さと、深さ。
どちらも消えずに、
どちらもそこにある味。
「これって……」
エスプレッソうさぎは目を丸くし、
抹茶の精は静かにうなずきました。
「そうか」
「共にあることもできるのですね」
アリスはにっこり笑って言いました。
「話したいときは、エスプレッソみたいに。
大切にしたいときは、抹茶みたいに」
そして、そっと付け加えました。
「どちらも、心から出ていればいいのよ」
その瞬間、
カフェのざわめきと、茶室の静けさが、
やさしく溶け合いました。
エスプレッソうさぎは少しだけゆっくり話し、
抹茶の精はほんの少しだけ、早く言葉を紡ぎました。
「ねえアリス」
「また一緒にお茶をしましょう」
「ええ、もちろん!」
こうしてアリスは、

“速さ”と“静けさ”のあいだにある、
新しいお茶の時間を見つけたのでした。
解説
イタリア人と日本人の民族の違い、考え方の違いを
お話にしてみました。


