ホルムズ海峡談義
- 歯科25City
- 4月1日
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~アリス先生の海底教室~
ペルシャ湾の深い海底、珊瑚の森が自然の黒板のように広がる「海の教室」では、今日も魚たちが大集合していた。
オマール湾から海流に乗ってきたイワシのシルバー、レインボー色の熱帯魚、年配のマグロのおじさん、そして色とりどりの小魚たちが、貝殻の机に座ってヒレをピンと立てている。
今日は特別授業の日。先生は、誰もが尊敬する賢いアリス先生だった。
アリス先生は、優しい青い鱗を持つ古株のエンゼルフィッシュ。長いヒレを優雅に広げながら、珊瑚の前に浮かび上がった。
「みんな、静かに。今日は『ホルムズ海峡の歴史』をみんなで学ぶよ。そして、最後に『これからどうしたらいいか』を一緒に考えようね。」
教室がざわっと泡で満ちた。シルバーが興奮して尾を振る。
「先生! オマール湾のレインボーが、最新の人間のバカ話を運んできたんですけど!」
アリス先生は微笑みながら、ヒレで「しーっ」と合図した。
「うん、聞いたよ。でも、まずはちゃんと歴史から始めないとね。
ホルムズ海峡はね、ずっと昔から『海の道』だったの。
人間たちはまだ油なんて知らない頃、帆船で香辛料や絹を運んでいたわ。
魚たちにとっては、ただの広い通り道。
俺たちと同じように、自由に泳いで、プランクトンを食べて、子孫を増やしていただけ。
国境なんて、なかったのよ。」
レインボーがヒレを広げて割り込んだ。
「でも先生! 人間が『黒い液体』を見つけてから、全部変わっちゃったんでしょ?」
「そうよ。」アリス先生は静かに頷いた。
「人間は海底の古いプランクトンの化石——つまり『石油』——を掘り出して、巨大な黒い船に詰め込んで運び始めた。
あの狭い海峡が、世界の石油の『生命線』になったの。
毎日、何百隻ものタンカーがビッシリ並んで通るわ。
人間たちは『エネルギーだ! 経済だ!』って大喜び。でも……」
マグロのおじさんが深い泡の溜息をついた。
「時々、軍艦が来て威嚇し合うんだろ? 俺の親戚がペルシャ湾の奥で見たってよ。
ドーンって爆発の練習、海が揺れて油が漏れたら……珊瑚も、俺たちも、みんな黒い雲に飲み込まれる。」
アリス先生は黒板代わりの珊瑚に、ヒレで簡単な地図を描いた。
「歴史を簡単に言うとね。
昔は人間同士の貿易の道だったけど、石油が発見されてから『争いの道』になった。
イランとイラクが戦争したときも、タンカーが攻撃された。
アメリカや他の国も軍艦を並べて『この海峡は俺たちのものだ!』って言い合う。
封鎖すると脅すくせに、封鎖したら自分たちの国も石油が届かなくてパニック。
人間は『賢い』って自分を褒めるけど、海のルールが全然わかってないのよ。
海には国境なんてない。海流はみんなのもの。資源は分け合って使うものなのに。」
教室が「えーっ!」と大きな泡の合唱になった。
アリス先生は優しく微笑んで続けた。
「でも、歴史は終わらないわ。これからどうしたらいいか——それが今日の課題よ。
みんなで話し合ってみよう。人間たちに、何を教えてあげたらいいと思う?」
シルバーが真っ先にヒレを挙げた。
「先生! 人間に言ってやりたい!
『油なんか燃やさずに、太陽や風を使えよ!』って。
俺たち魚はプランクトン食べて泳ぐだけで平和なのに、人間は自分で自分の首を絞めてるんだぜ!」
レインボーが大笑いしながら加わった。
「そうだよ! 海峡を『俺たちのもの』って独り占めしようとするから喧嘩になるんだ。
魚の俺たちみたいに『みんなの道』って思えばいいのに。
封鎖するって脅す暇があったら、泳げばいいじゃん!」
マグロのおじさんがゆっくりと頷いた。
「人間は陸に上がってから、境界線とか所有権とか作り出して、戦争まで始める。
でも海の中は違う。海流に乗って、自由に生きるだけ。
俺たち魚は国境を作らない。みんなで分け合って、喧嘩なんて無駄だって知ってる。
人間にも、それを教えてあげたいなあ……」
小魚たちが一斉に泡を吐いた。
「先生! 人間よ、もっと魚を見習え!」
「そうだそうだ! 海峡はみんなの道だよ!」
「油より、ただ泳げばいいのに!」
アリス先生はみんなの声を聞きながら、優しくヒレを振った。


