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ポテサラ&日本酒

  • x Happy
  • 4月22日
  • 読了時間: 4分

ある秋の夜、浅草の路地裏にひっそりと佇む居酒屋「明寅の酔月亭」。


カウンターの向こうで、七十を越えた

相性ピッタリ日本酒
相性ピッタリ日本酒

ご主人・明寅が静かに河童の形の徳利を温めていた。


「日本酒に、ポテトサラダか……」


カウンターに座ったばかりの青年・浩太が、


メニューを眺めながら呟いた。


仕事帰りで喉が渇いていた彼は、


純米大吟醸を注文したついでに、いつものポテサラを頼んだ。


明寅は小さく笑い、包丁を置いた。


「若いの、ただのポテサラじゃねえよ。


日本酒に合う本物のやつを、出してやる」


明寅は古い木箱からジャガイモを取り出し、


静かに語り始めた。


「まず、うんちくを一つ。ポテトサラダのルーツはロシアだ。


十九世紀のモスクワで、シェフのリュシアン・オリヴィエが作った


『オリヴィエ・サラダ』が元祖さ。


鶏肉、ジャガイモ、ピクルスをマヨネーズで和えた高級料理だった。


それが明治時代に日本へ渡り、帝国ホテルで初めて


『日本風』にアレンジされたんだ。大正時代のことだよ。


当時はまだマヨネーズが珍しくて、帝国ホテルのシェフが


『日本人の舌に合うように』と、じゃがいもを潰して具を増やした。


それが今のお袋の味の原型さ。戦後、


マヨネーズが工場生産されて爆発的に普及し、


学校給食にも出て、日本人のソウルフードになった。


ロシア生まれ、西洋育ち、日本で魂を宿した料理――それがポテサラだ」


浩太が目を丸くする中、明寅はジャガイモを丁寧にゆで始めた。


皮を剥き、熱いうちに粗く潰す。そこへ、薄切りにしたきゅうりを塩揉みして水気を切り、


にんじんの細切り、刻んだハムを加える。


普通のポテサラならここで終わりだ。


だが明寅は違った。


「ここが肝心。日本酒に合わせるなら、和の魂を入れなきゃならん」


彼は塩昆布を細かく刻んで投入し、かつお節をパラパラと振りかけた。


さらに、隠し味にわさびをほんの少し。


マヨネーズは控えめに、代わりにほんのり醤油とごま油を回しかける。


最後に、刻んだイカの塩辛を少量混ぜ込んだ。


「これだよ、『最強に日本酒に合う和風ポテサラ』。


塩昆布の旨味と塩気が、純米酒の米の甘みを引き立てる。


わさびのツンとした爽やかさが、吟醸香をクリアに通す。


イカ塩辛の磯の風味が、酒のコクと溶け合う。


じゃがいものでんぷん質が、アルコールを優しく包み込んで、


喉の渇きを癒やしながらもまた酒を呼ぶ。


爽やかさとコクが相乗効果で、双方が輝くんだ。


純米酒好きの間では『最強のおつまみ』って言われてるよ」


熱々のポテサラが、明寅の特製タレで和えられて皿に盛られた。


浩太が一口運ぶと――。


「うわっ……🎵」


言葉を失った。クリーミーなのに後味スッキリ。


塩気と旨味が、口の中で酒の余韻と絡み合う。


明寅吉は微笑みながら、


長年いるスタッフは、すかさず、


純米大吟醸を🍶に


注いだ。


「もう一つうんちく。ポテサラが日本酒に合う本当の理由は『日本人の舌の記憶』にある。


じゃがいもは江戸時代に伝わったけど、当時は『米の代わり』の貧乏食だった。


それが肉じゃがやコロッケを通じて愛され、ポテサラで『ごちそう』になった。


酒もまた、米から生まれる日本人の誇りだ。


二つが重なると、まるで昔の宴会の記憶が蘇るような気がするんだよ」


浩太は二杯目を空け、三杯目を注いでもらった。寅吉の目には、遠い昔の帝国ホテルの厨房や、戦後の給食の風景、そして今このカウンターの情景が、すべて繋がっているように映っていた。


「ご主人、これ、毎日食べたい……」


「毎日は体に悪いぞ。若いの。でも、たまにはいい。日本酒とポテサラは、人生のいい相棒だ」


その夜、浅草の路地に、静かな笑い声と酒の香りが、いつまでも漂っていた。


「あえて燗にして、ポテサラと一緒の楽しみ方を次回に、、、」


そのときは熟成タイプの純米大吟醸で。


――おわり


(おまけ:実際に作るなら、じゃがいもは熱いうちに潰して味を染み込ませ、


具は「和の旨味素材」を入れると日本酒との相性は抜群です。)


純米大吟醸を温める目安

 人肌燗(35℃前後)

 ぬる燗(40℃前後)


純米大吟醸は香りの華やかさ、繊細な味わいを楽しむため、

通常は冷で出されることが多いです。

 
 
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