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何気ない1日

  • x Happy
  • 5月7日
  • 読了時間: 3分

#アロスティチーニ


夕暮れのイタリアの街は、オレンジ色の光に包まれていた。


石畳を歩く人々は、急いでいるようで、どこかゆったりしている。


窓辺には赤いゼラニウム。


遠くでは教会の鐘が静かに鳴っていた。


マルコは仕事を終え、小さなバールの前で立ち止まった。


ガラスケースには、パニーニや焼き菓子が並び、エスプレッソマシンからは白い湯気が立ち上っている。


「お疲れ、マルコ!」



店員が陽気に声をかける。


「今日は何を食べたんだ?」


マルコは笑いながら答えた。



「チキンとレタスとトマトを、ホットソースで包んだラップサンドさ」


「イタリア人なのにラップサンドか?」


「たまには軽いものもいいだろ?」


店員は大げさに肩をすくめる。


「でもトマトはちゃんと美味しかったんだろうな?」



その言葉に、二人は声をあげて笑った。



イタリア人にとって、食事の話は天気のようなものだった。


何を食べたか。


どこで食べたか。


パンはどうだったか。


ソースは美味しかったか。


そんな何気ない会話が、毎日の大切な時間になる。



夜になると、街の空気はさらに柔らかくなる。


マルコは友人たちと待ち合わせをして、炭火焼きの小さな店へ向かった。


店の前には香ばしい煙が漂っている。


「来たぞ!」


友人のアントニオが手を振った。


テーブルにはすでに、熱々のアロスティチーニが並んでいた。


細い串に刺さったラム肉。


炭火で焼かれた香りが、夜風に溶けていく。


ジュウ、と脂が落ちる音。


マルコは一本手に取り、そのまま頬張った。


「……ああ、美味い」


炭の香り。


塩の加減。


ラム肉の力強い旨味。

1日の疲れを食事で解決
1日の疲れを食事で解決

その瞬間、一日の疲れが静かにほどけていく。


「結局こういう料理が一番だよな」


アントニオが赤ワインを飲みながら言う。


「豪華じゃなくても、誰かと食べるだけで美味しくなる」


マルコはうなずいた。


隣の席では家族連れが笑い、


奥では年配の夫婦がゆっくりワインを飲んでいる。


誰も急いでいない。


ただ、美味しい時間を味わっている。


マルコは串をもう一本取りながら、ふと思った。


人生は、きっとこういう小さな幸せの積み重ねなのだ。


昼に食べた少し辛いラップサンド。


夜に友人と囲むアロスティチーニ。


他愛ない会話。


笑い声。


それだけで、人は明日も頑張れる。


店を出る頃には、夜空に星が浮かんでいた。


「明日はピザにするか?」


誰かが言う。


「いや、パスタだろ」


また笑い声が広がる。


イタリアの夜は、今日も温かかった。 


つづく


解説


日本では串に刺したお肉は焼き鳥が一般的ですが、

イタリアでは、串に刺したラム肉が一般的です。

イタリアの友人が夕食にたべたラム肉を

お話にしてみました。

 
 
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