北欧で、パネトーネ
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- 5月28日
- 読了時間: 4分
更新日:6月3日
北の風がやさしく吹く午後でした。
場所は北欧の山のふもと。
ムーミー谷の草原には、小さな白い花が揺れ、
川辺にはきらきらと光が跳ねています。
イソッタは、籐のかごを片手に、ハーブを摘みながら歩いていました。
ミント、レモンバーム、カモミール。
今日は冷たいハーブティーを作ろうと思っていたのです。
すると遠くから、ぱたぱたと走ってくる影が見えました。
「イソッター!」
大きな帽子を押さえながらやって来たのは、ミコでした。
「ムーミーやスナフーたちがお茶会を開くんだって。
来るでしょ?」
「お茶会?」
「そう。それでね、変なの。
今日のお菓子、“パネトーネ”なんだって。」
イソッタは思わず立ち止まりました。
「えっ……パネトーネ?」
パネトーネといえば、イタリアでは冬のお菓子。
クリスマスの頃、家族で切り分けて食べる、
ふわふわの甘いパンです。
イソッタは空を見上げました。
夏の日差しが眩しく、雲は真っ白です。
「ここは、いま、とても暑い季節なのに……どうして今、パネトーネなのかしら。」
「さあ?」
ミコは肩をすくめました。
「でもムーミーは、“夏だからこそ意味がある🎵”って言ってたよ。」
その言葉が少し気になって、
イソッタはお茶会へ向かうことにしました。
ムーミー谷の川辺には、
長い白いテーブルが用意されていました。
ガラスの器には赤いベリー。
氷の入ったレモネード。
青い花の飾り。
風鈴のような小さな音まで聞こえます。
そして真ん中には――
大きな、大きなパネトーネ。
丸くて黄金色。
表面には粉砂糖がふわりとかかり、
オレンジピールとレーズンの香りが漂っていました。
「わあ……。」
イソッタは思わず微笑みます。
ムーミーが言いました。
「ローマから届いたんだって。」

「でも、夏なのに?」
すると、静かに座っていたスナフーが帽子を少し上げました。
「季節外れって、誰が決めるんだろうね。」
風がさらりと草を揺らします。
「冬のお菓子を夏に食べたっていい。
“今しか食べちゃいけない”なんて、ちょっと窮屈じゃない?」
イソッタは、その言葉に少し驚きました。
たしかにイタリアでは、パネトーネは冬のもの。
でも――
思い出まで、季節に閉じ込めなくてもいいのかもしれない。
ムーミーママが、やさしく切り分けてくれました。
ふわっとした生地。
柑橘の香り。
ほんのり溶けるバター。
イソッタは一口食べます。
その瞬間、懐かしい、友人たちとの楽しいお茶会、
遠いローマの夕暮れが胸によみがえりました。
石畳の熱。
夕方の鐘の音。
カフェから漂うエスプレッソの濃厚な香り。
冬の市場で笑っていた人たち。
でも不思議でした。
夏の風の中で食べるパネトーネは、
どこか軽やかで、新しい味がしたのです。
「……美味しい。」
「でしょ?(^^♪」
ムーミーは嬉しそうです。
するとムーミーママが、小さな秘密を教えてくれました。
「実はね。夏のパネトーネには理由があるの。」
「理由?」
「冬の思い出って、寒い時だけ思い出すものじゃないでしょう?」
みんな静かに耳を傾けます。
「暑い日に、冬のお菓子を食べるとね。
“今ここ”の幸せ♪と、“あの日”の幸せ♪が一緒になるの。」
イソッタは、はっとしました。
季節外れだったのではありません。
これは――
思い出を、今の幸せに変えるためのお茶会だったのです。
川辺を風が通り抜けます。
遠くで鳥が鳴き、レモネードの氷が小さく音を立てました。
イソッタはパネトーネをもう一口食べながら、静かに笑います。
「夏のパネトーネって、素敵ね。」
するとミコが言いました。
「じゃあ冬にはスイカ食べようよ。」
みんなが吹き出しました。
北欧ムーミー谷の夕暮れは、笑い声と甘い香りに包まれながら、
ゆっくりと金色に染まっていったのでした。
つづく
解説
ふわっふわで
おいしいパネトーネ
(アーモンド入りや、ベリーのシロップ漬け入り、
チョコレート入りなどいろいろ)を思い出しながら
北欧の山でお茶会するイメージで
かいてみました。
ムーミンと一緒に楽しむ感じを
だしました。
北欧フィンランドは、今の季節令和8年、5月ですと、
現在10℃から20℃辺りなので涼しい感じです。


