深夜三時
- x Happy
- 4月27日
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深夜三時。
見慣れない日本の部屋で、アリスはふわりと夢の続きのように眠っていました。
そのとき――
「地震です。地震です。」
携帯のアラームが、静かな夜を切り裂きます。
「……え……?」
けれどアリスは、うつ伏せのまま枕に頬を押しつけて、小さくつぶやきました。
「こんな真夜中に……だって私、さっき二時に寝たばかりなのよ……」
昨夜は仲間たちと、きらきらした時間を過ごしました。
グラスの中で揺れるワイン、笑い声、少しだけ背伸びした大人の夜。
その余韻に包まれたまま、やっと眠りに落ちたばかり。
だから――
「身体が……起きないの……」
揺れは、ぐらり、ぐらりと部屋を揺らしました。
棚の小物がかすかに触れ合い、カタリ、と鳴ります。
けれど大きな被害はなく、やがて静けさが戻りました。
アリスは結局、目を閉じたまま。
夢と現実のあいだで、再び眠りに落ちていきました。
そして、朝。
やわらかな光がカーテン越しに差し込み、
小鳥の声が現実を連れてきます。
「……あら、本当に地震だったのね」
アリスはベッドの上で体を起こし、昨夜のことを思い出しました。
携帯には、しっかりと「緊急地震速報」の履歴。
「もし、もっと大きな揺れだったら……?」
その瞬間、アリスの瞳は少しだけ真剣になります。
すると――
どこからともなく黒板が現れ、チョークがひとりでに動き出しました。
今日は「アリス先生のふしぎ授業」の時間です。
「みなさん、おはようございます」
アリスはいつの間にか、小さな先生の帽子をかぶっています。
「今日は、日本でとても大切なお話をしますね」
黒板に、大きく書かれた文字。
“地震と保険のふしぎな関係”
「まずね、日本は地震がとても多い国なの」
チョークが、地図の上に小さな揺れのマークを描きます。
「だから、お家が壊れてしまったり、火事が起きてしまうこともあるの」
アリスは少しだけ声を落としました。
「そして大事なのは――普通の火災保険だけでは、地震の被害は守れないことが多い、ということ」
黒板に、さらに文字が浮かびます。
地震で壊れた家
地震が原因の火災
「こういう被害は、“地震保険”がないと十分に補えないことがあるの」
アリスは、ふっと微笑みました。
「昨夜の私みたいにね、“大丈夫だろう”って思ってしまう気持ち、よくわかるわ」
ベッドで動けなかった自分を思い出して、少し照れたように笑います。
「でもね――」
チョークが、最後の言葉を書きました。
“備えは、眠っている間もあなたを守る”
「人は、いつでも完璧には動けないの」
「眠っているときも、疲れているときもある」
「だからこそ、“先に準備しておくこと”が大切なのよ」
窓の外では、穏やかな朝。
けれどアリスの心には、小さな決意が芽生えていました。
「次はちゃんと起きる……は、難しいかもしれないけど」
少しだけ苦笑してから、続けます。
「でも、守る準備はできるわ」
不思議の国から来た少女は、
日本という現実の中で、ひとつ賢くなりました。
それは魔法ではなく、
“備え”という、静かで確かな力のことでした。


