水力発電(ブータン国)
- 歯科25City
- 4月5日
- 読了時間: 4分
不思議の国のアリス先生と、ブータンの青い秘密
むかしむかし、ある雨の午後、わたしは本棚の奥で古い本をめくっていた。表紙には「不思議の国」と金文字で書いてある。ぱらりと開くと、中から白いウサギが飛び出してきたわけではない。でも、代わりにふわふわの青いドレスを着た女の子が、くるりと宙返りをして現れた。
「こんにちは! わたしはアリス。
今日は『ブータン国のマイニングと水力』の先生を務めますわ。
さあ、行きますよ! 不思議の国から、ヒマラヤの王国へ!」

アリスはわたしの手を握り、くるくる回った。
世界がぐるんぐるん渦を巻き、次の瞬間、
わたしたちは雪をかぶった高い山々の間に立っていた。
空気は冷たくて澄んでいて、どこかで川の歌う声が聞こえる。
「ここがブータンよ。『雷の龍の国』って呼ばれるの。
みんな『幸せの量』を大切にする国なのよ。
GDPじゃなくてGNH——Gross National Happiness、
総国民幸福量! お金より笑顔を数えるの。
素敵でしょう?」
アリスは指をパチンと鳴らした。
すると、目の前の谷間に巨大なダムが現れた。
水はまるで銀の絹糸のように輝き、勢いよく落ちていく。
轟音が山々に響き渡る。
「これが水力発電よ! ヒマラヤの雪解け水と、
夏のモンスーンが作る、底知れぬ力。
ブータンは今、約3.5ギガワットの水力発電所を持っているの
でも、まだまだ眠っている力があるのよ。
将来的には33ギガワットまで広げられるって!
川は『余った電気』をたくさん作るの。
普通ならインドに安く売っちゃうんだけど……ここでは違うの!」
アリスはにっこり笑って、ダムのてっぺんに飛び乗った。
そこに、キラキラ光る巨大な箱が並んでいた。
箱の中ではファンがブーンと唸り、青い光が点滅している。
「見て! これがマイニングよ!
ビットコインマイニング! 電気を食う巨大なコンピュータが、
数学のパズルを解いて、ブロックチェーンに新しい『金貨』を刻むの。
普通の国だと石炭や石油でやるけど、ブータンは違うわ。
100%水力のクリーンエネルギーだけ!
だから『グリーン・ビットコイン』なの。
化石燃料ゼロ、炭素ゼロ。地球に優しい魔法の採掘よ!」
突然、隣の箱から白いウサギのような男の子が顔を出した。
いや、ウサギじゃなくて、ブータンの若いエンジニアだった。
彼はヘッドセットを外しながら言った。
「アリス先生! モンスーンの季節は電力があふれてるんです。
ダムが満杯で、川が歌いだすくらい!
その余剰電力でマイニングをすれば、無駄にならない。
2019年頃から国家でこっそり始めたんです。
Druk Holding and Investmentsっていう国の基金が全部仕切ってるんですよ。」
アリスはうなずいた。「そう! 最初は秘密だったの。
でも今では、ブータンは1万3000ビットコイン以上を掘り出して、
GDPの40%近くを稼いだのよ!
そのお金で公務員の給料を倍にしたり、
貧困を減らしたり、若者が国を離れないようにしたわ。
脳みそ流出を止めたの! 幸せの量が、どんどん増えてるんですって。」
わたしは目を丸くした。
「でも……今は2026年よね?
最近、ビットコインを少し売ってるって聞いたけど……」
アリスは肩をすくめた。
「ええ、売ってるわ。保有量はピークから半分以下になったって。
でもね、それでも数千BTC持ってるの。
売ったお金は予算に回したり、インフラに使ったり。
マイニングコストはほぼゼロだから、
全部利益なのよ。冬の乾季は少し電気をインドから買うけど、
夏の余剰をデジタルゴールドに変える——
それがブータンの賢い魔法!」
すると、ダムの向こうから、
赤い女王のような女性が現れた。いや、ブータンのお姫様風の大臣だった。
彼女は高らかに言った。
「我が国は水力を宝に、未来を掘る!
AIも誘致するわ。観光客も倍に!
でも忘れないで。幸せの量が一番よ!」
アリスは笑って手を振った。
「ほら、女王様もおっしゃってるわ。
ブータンはただ電気を作るだけじゃない。
水力を、未来の富に変えるの。環境を壊さず、
みんなを笑顔にする。まさに不思議の国!」
山風が吹き、ダムの水しぶきが虹になった
わたしはアリスの手を握り返した。
「先生……ありがとう。
ブータンのマイニングは、水力の歌を、
デジタルな宝に変える物語なんだね。」
アリスは目を輝かせて言った。
「ええ! そしてその物語は、まだ始まったばかりよ。
次はあなたが、どんな不思議を掘り起こすのかしら?」
くるりと回ると、世界がまた渦を巻いた。わたしは自分の部屋に戻っていた。でも、手のひらに小さな青い光が残っていた。それは、ブータンの川がくれた、幸せの量の欠片だった。
おしまい


